これが女の生きる道(2) 田辺聖子 カモカのおっちゃんシリーズ2021年06月20日

 自分のことを書いたエッセイは、自慢話になってしまっていることが多い。田辺聖子のカモカのおっちゃんシリーズは、旦那さんとのやりとりを描いたものだが、毎回絶妙な具合に、そこから逃れている。
 作家として、とても訓練したのだろうけれど、文章にスキがなく、しかもやわらかい。やわらかいだけでなく、書き手自身の芯のようなものと、それを堅く見せないテクニックを感じる。
 その時々の社会的な事象を、おっちゃんと二人で話し合いながら進んでいくのだが、成り行きも、最後の落としどころも、わたしとしてはとても納得する。物事に対するバランス感覚に納得しているのだと思う。
 今生きていたら、コロナやオリンピック開催について、おっちゃんとどんな話をしたのだろうと思う。

これが女の生きる道(3) 坂口三千代 「クラクラ日記」2021年06月27日

 坂口安吾の小説は一つしか読んだことがない。坂口三千代さんのこともよく知らない。この本を初めて読んだのは20代の時だし、どこがいいのかと言われてもはっきり答えることはできない。でも、わたしの中にずっとひっかかり続けている。
 安吾との生活や関わりが綴られていくわけだが、三千代さんは安吾についていく。安吾はどんどん壊れていくのに、この人はどこまでもついていくのだ。それが理解できない。ただ、それを否定したいとかそういうことではない。自分はそうしたいとは思わないし、そうできないだろうけど、この人の許容のしかたに圧倒される。
 三千代さんは、最初の結婚で得た静かな家庭を守っていくこともできたかもしれない。でも結局は、安吾との嵐の生活を選んだ。全部が全部とは思わないけれど、これも女の人生の一つのお手本だよなと思う。