コージーミステリーが好き(5) フロスト警部・シリーズ (R・D・ウィングフィールド)2021年06月06日 15:43

 このシリーズは、ロンドン近くの田舎町が背景。警察は人手が足りないので、フロスト警部も殺人、誘拐、窃盗、新人の育成を同時にやらなくてはならない。
 手に余る仕事の末、失敗、失敗、叱責・・・、1日が長い。おまけにこの主人公は、とてもだらしない人物だ。男やもめに蛆がわき、を地でいっている。切れ者でもなく、猥雑なジョークしか言わない。
 それでもわたしが読み続けられるのは、フロストは人をだましたり、上の者におもねったりしないからだ。この人なら、わたしの手を離さないだろう、そう思わせてくれる。
 (このシリーズは、テレビドラマ化されている。でも、そこに出てくるフロストは、いい人すぎる。脚本家はフロストになんの思い入れもなかったのだろう。)

コージーミステリーが好き(4) ミセス・ポリファックス・シリーズ (ドロシー・ギルマン)2021年06月06日 13:52

 ミセス・ポリファックスは、60代もだいぶいった未亡人。生活の心配はないけれど、生きていくはりあいもない。どうせなら、人の役に立とうと、いきなりCIAに行った。
 もちろん断られるわけだが、面がわれていないということから、小さな仕事で使われることになる。ばあちゃんのスパイ。この設定自体、荒唐無稽だが、話の筋も結構ご都合主義的なことばかり。だけど、そこは問題じゃないのよ。
 ミセス・ポリファックスには、一昔前のよきアメリカ人のいいところが揃っている。強くて、明るくて、健康。いつもしゃきっと背筋をのばして歩いている。
 会話でも、教訓めいたことや名言は言わない。ただ、健康的な常識や品が感じられるのがよい。あんな風に話せるようになりたいと思ってしまう。

コージーミステリーが好き(3) 老人たちの生活と推理シリーズ (コリン・ホルト・ソーヤー)2021年05月31日 00:34

 「老人たちの生活と推理」・・・表紙にそう書いてあったのを見て、これは買いだと思った。
 老人の推理と言えば、ミス・マープルが有名だが、こっちは現代アメリカの金持ちの老人。高級老人ホームに、それぞれのコテージを持つという二人のばあちゃんが主人公だ。
 やることがあまりないから、身近に起こった事件にチビばあちゃんが首を突っ込んでいく。デカばあちゃんがブレーキをかけながら事件は解決の方向に向かう。
 とにかくお金持ちの人たちなので、いわゆる老人のみじめさは全くない。食事の場面がよく出てくるが、シェリー酒をひっかけてから、自分の席に着き、シュミット夫人の料理をいただくという毎日。こういう見たことも、将来見ることもない世界の描写もなかなかおもしろい。
 このシリーズを何冊か読んでいくと、主人公の二人のばあちゃんの扱いが微妙に変わっていっている。偏屈・攻撃的なチビばあちゃんが主人公だったのだが、おおらかで包容力のあるデカばあちゃんの印象が強くなっていく。作者の中で、デカばあちゃんへの愛情が深くなっていったのだろうか。

コージーミステリーが好き(2) コーンウォール・ミステリーシリーズ (ジェイニー・ボライソー)2021年05月31日 00:29

 コーンウォールはイギリス最南端、西側の半島地域だ。風光明媚なところらしい。このシリーズは、ここで起こる事件を、素人探偵のローズ・トレヴェリアンが解決していく。彼女はアラフィフの画家で、夫に先立たれて一人暮らし。ちゃんとご飯も作るし、そういうイギリスの日常生活がきちんと書かれている。
 絵葉書用の絵を描くために、彼女はいろいろなところにスケッチに行くのだが、そういう地域巡りの描写も楽しい。友達のローラとは、しばしばパブでお酒を飲む。ローラの旦那は漁師なのでたまにしか帰ってこないのだ。
 中年のイギリス女性を中心とする、ちょっと自由な生活がうまく描かれと思う。
 2冊目あたりから恋愛めいた脇筋が入るようになるけれど、こういうのはいらん。

コージーミステリーが好き(1) リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ (S.J.ローザン)2021年05月23日 18:22

著者も女性なら、訳者も女性。
 1.見たこともないようなすごいトリックより、主人公の生活や街の様子など、細々したところをちゃんと書いてくれるミステリーが好き。
 2.女性の作者の作品に共感できるものが多い。ミステリーの女王アガサ・クリスティーも女性だし。
 以上の理由からこのシリーズも大好き。
 時は現代、ニューヨークで探偵稼業を営むリディアとビル。二人は基本的に関係がない。でも時々一緒に仕事したり、活動の線が交わることがある。20代のリディアと40代のビル、それぞれの日常がていねいに描かれる。わたしにはそこが一番の魅力。
 「チャイナタウン」は、このシリーズの第1作。リディアが語り手として物語が進む。2巻目の「ピアノ・ソナタ」では、ビルが語り手。3巻目以降も語り手が交互に交代し、それぞれの視点から物語が見られる。こういった趣向も魅力。